建物の外壁は、日常的に雨風や紫外線にさらされ、年月とともに劣化が進行します。
外壁タイルやモルタルの浮き・剥離は、見た目には分かりにくいものの、放置すれば落下事故につながり、歩行者や入居者に重大な危険を及ぼすおそれがあります。
こうしたリスクを防ぐため、建築基準法では一定規模・用途の建築物について、外壁の定期的な調査と報告を所有者・管理者に義務付けています。
近年、その外壁点検の新しい手法として注目されているのが、赤外線カメラを搭載したドローンによる外壁点検です。
外壁点検が求められる背景
従来、外壁点検は足場やゴンドラを設置し、作業員が高所でテストハンマーを用いて打診する方法が主流でした。
しかしこの方法には、
- 足場設置に多額の費用がかかる
- 工期が長く、入居者や利用者への影響が大きい
- 高所作業に伴う安全リスクが避けられない
といった課題がありました。
こうした背景から、より安全で合理的な点検方法として、赤外線調査、特にドローンを活用した調査の活用が進んでいます。
赤外線ドローン外壁点検とは何か
赤外線ドローン外壁点検とは、赤外線カメラを搭載したドローンを建物の外周に飛行させ、外壁表面の温度分布を撮影・解析する点検方法です。
外壁タイルやモルタルに浮きや剥離が生じると、健全部と比べて熱の伝わり方が変わり、表面温度に差が現れます。
赤外線カメラはこの微細な温度差を可視化し、肉眼では確認できない内部劣化の兆候を検出します。
国土交通省は、一定の条件と手順を満たした赤外線調査について、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する調査方法として位置付けており、ドローンによる赤外線調査もその対象に含まれています。
従来の外壁点検との違い
赤外線ドローン点検は、従来の打診点検と比べて点検の考え方が大きく異なります。
従来点検は「人が近づいて確認する」方法であるのに対し、ドローン点検は「離れた位置から全体を面的に把握する」方法です。
そのため、足場やゴンドラが不要となり、短期間で建物全体を確認できる点が大きな特徴です。
また、赤外線画像や可視画像をデータとして保存できるため、点検結果を客観的な記録として残せる点も、従来方法にはない利点といえます。
赤外線ドローン外壁点検の主なメリット
1.安全性の向上
作業員が高所に上る必要がなく、転落事故などのリスクを大幅に低減できます。
点検作業は地上から行われるため、第三者や入居者への安全面でも優れています。
2.コストと工期の削減
足場設置が不要となることで、点検にかかるコストを抑えやすくなります。
また、準備期間が短く、調査自体も比較的短時間で完了するため、建物利用への影響を最小限に抑えられます。
3.広範囲を効率的に確認
ドローンは高層部や狭小部など、人が近づきにくい箇所にも容易にアクセスできます。
その結果、建物全体を均一な条件で確認することが可能です。
4.法令点検への対応
建築基準法第12条に基づく定期報告制度において、ガイドラインに沿って実施された赤外線ドローン調査は、正式な外壁調査方法として活用できます。
注意点|ドローン点検は万能ではない
一方で、赤外線ドローン点検にも留意すべき点があります。
赤外線調査は、天候や日照条件の影響を受けやすく、雨天や強風時には実施できない場合があります。
また、外壁の材質や形状によっては、赤外線調査が適さない箇所も存在します。
国土交通省のガイドラインでも、赤外線調査で異常が疑われた箇所については、必要に応じて打診などの追加確認を行うことが推奨されています。
つまり、赤外線ドローン点検は「異常の有無を効率的に抽出する手段」であり、最終的な判断は他の方法と組み合わせて行うことが重要です。
実務で有効な活用方法
現在、多くの現場では、
- ドローンによる赤外線調査で外壁全体をスクリーニング
- 異常が疑われる箇所のみを打診などで詳細確認
- 必要最小限の補修・修繕につなげる
というハイブリッド型の点検が採用されています。
この方法により、安全性・コスト・精度のバランスを取りながら、合理的な維持管理が可能になります。
まとめ|「登らない外壁点検」という新しい常識
外壁点検は、単なる維持管理ではなく、建物所有者・管理者の責任を果たすための重要な行為です。
赤外線ドローンを使用した外壁点検は、従来の方法を否定するものではなく、補完し、より安全で効率的に進化させる技術です。
安全性の向上、コストの抑制、法令への適切な対応を同時に実現できる点で、
赤外線ドローン外壁点検は、これからの建物管理における現実的かつ有効な選択肢といえるでしょう。
