1.12条点検(定期報告制度)とは何か
建築基準法第12条に基づく定期報告制度(いわゆる12条点検)は、
一定規模・用途の建築物について、所有者・管理者が建物の安全性を定期的に確認し、特定行政庁へ報告する義務を定めた制度です。
対象となるのは、劇場・百貨店・病院・ホテル・共同住宅など、不特定多数の人が利用する、または安全配慮が特に必要な建築物です。
点検・調査は、一級・二級建築士や特定建築物調査員などの有資格者が行い、その結果を報告書として提出します。
この12条点検では、外壁・防火設備・避難施設・建築設備などが調査対象となりますが、特に外壁調査は重視されている項目の一つです。
2.12条点検における「外壁調査」の位置付け
外壁タイルやモルタルの剥落事故は、全国で実際に発生しており、人命に直結する重大事故につながる可能性があります。
このため、国土交通省は12条点検において、
- 手の届く範囲:打診や目視
- 高所など危険性のある範囲:双眼鏡等による目視
- 一定期間ごと(おおむね10年)に全面的な外壁調査
を求めてきました。
従来、この「全面調査」は足場やゴンドラを設置し、テストハンマーによる全面打診を行うのが原則でした。
3.ドローン調査が12条点検に組み込まれた経緯
こうした従来方法は、安全性・コスト・工期の面で大きな負担となるケースが多く、
その代替・補完手法として注目されてきたのが赤外線調査です。
そして、令和4年(2022年)の国土交通省告示改正により、
「無人航空機(ドローン)による赤外線調査」は、
テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する場合に限り、
外壁調査の方法として位置付けられる
ことが明確化されました。
これにあわせて策定されたのが、
「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」です。
4.制度上の結論|ドローン調査は「12条点検の代替」ではない
ここで最も重要なポイントは、
ドローン調査は12条点検そのものを置き換える制度ではないという点です。
整理すると、制度上の位置付けは次のとおりです。
- 12条点検(定期報告)
→ 建物所有者・管理者に課せられた法的義務 - ドローン赤外線調査
→ 12条点検の中で行う「外壁調査の一手法」
つまり、
12条点検という枠組みの中に、ドローン調査が組み込まれている
という関係になります。
5.ガイドラインが求めているドローン調査の条件
ドローン調査を12条点検に用いるためには、
国土交通省ガイドラインに沿った実施が前提となります。
ガイドラインでは、以下の点が明確に示されています。
- 適切な気象条件(日射・気温差・風速など)の確認
- 撮影角度・距離などの調査条件の遵守
- 赤外線調査に適さない部位の把握
- 必要に応じた打診との併用
- 有資格者による判定と報告書作成
- ドローンの安全飛行計画とリスク管理
特に重要なのが、
「赤外線調査で異常が疑われた場合は、打診等で裏取りする」
という考え方です。
6.実務での一般的な運用モデル(ハイブリッド方式)
現在、12条点検の現場で多く採用されているのが、
ドローン×打診のハイブリッド方式です。
具体的には、
- ドローン赤外線調査で外壁全体をスクリーニング
- 温度差などから「異常の疑いがある箇所」を抽出
- 抽出箇所のみを近接打診で確認
- 有資格者が総合判定し、12条点検報告書に反映
という流れです。
この方法により、
- 安全面の向上
- 点検コストの抑制
- 工期短縮
- 法令要件の充足
を同時に実現できます。
7.自治体運用との関係に注意
12条点検の最終的な運用は、
各自治体(特定行政庁)の要綱・様式に委ねられています。
そのため、
- ドローン調査の可否
- 提出様式
- 写真・資料の添付方法
などは、自治体ごとに若干の差があります。
実務では、事前に所管行政と協議したうえで調査計画を立てることが重要です。
8.まとめ|12条点検におけるドローン調査の正しい理解
- 12条点検は「法的に義務付けられた定期報告制度」
- ドローン調査は「外壁調査を行うための認められた手法の一つ」
- 赤外線ドローン調査は条件付きで打診と同等の位置付け
- 実務では打診と組み合わせたハイブリッド運用が基本
- 自治体ごとの運用確認が不可欠
この関係を正しく理解することで、
安全性・合理性・法令遵守を両立した12条点検が可能になります。
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